自衛官の留学について(前編)
一般的な自衛隊に関する情報は、他のブロガーさんや、YoutuberさんがYoutubeに挙げていますので、自分は少し違った情報を知ってもらいたいと思い、今回は自衛隊における留学について書こうと思います。
出典 防衛日報デジタル
写真は、アラスカで実施されている米陸軍の上級山岳課程に参加した隊員の写真のようです。背景の山と空がきれいですね。(自分も死ぬまでに一度はアラスカへ行ってみたいと思っています)
「アメリカ軍に留学したい!!」というモチベーションだけで自衛隊入隊することには、個人的におすすめしませんが、現役の自衛官、または入隊を検討している方に「こんな選択肢もありますよ」ということを知っていただきたいという思いから、今回書こうと思います。
自分はアメリカ軍にしか留学したことがないので、これから書くことはアメリカ軍への留学を前提として書かせていただきます。(実際に米国以外の留学も存在します)
目次
- どんな教育・学校へ留学できるのか?
- 誰が留学できるのか?
- 留学するために必要な試験は?(前半)
1.どんな教育・学校へ留学できるのか?
もう退職していますので、自分の個人的な知識と経験から話します(変わっている部分もあると思います)が、米軍の戦略大学や一般の大学・大学院(ジョン・ホプキンス大学やマサチューセッツ工科大学等)、米軍の各職種学校の教育課程等です。
自衛隊として必要と考えられる知識の習得や技術の取得を目的としているため、受講する教育を自分で選べるといった話は聞いたことはありません。
教育枠を自衛隊としてお金を支払って(計画的に)取って、その教育枠に自衛官や防衛省職員を送り出しています。
自衛隊として、留学計画を作成していますが、アメリカ側が急に枠(空席)があることを自衛隊に連絡してくるので、いきなり計画外の留学機会の話がやってくることもあります。
2.誰が留学できるのか?
幹部自衛官(士官)、陸曹(下士官)、または防衛省職員(事務官、技官等)が留学する資格を持っていると思います。
しかしながら、留学する教育課程や学校により、階級、職種とその特技(以前にも述べたMOSですね)等の指定が存在し、併せて語学試験等もあり、実際はだれでも行けるものではありません。
例を挙げると、階級でE-5からE-7(自衛隊で言う3曹から2曹)のみ入校可能とか、ヘリのパイロットの教育課程には、ヘリのパイロットの資格を持った隊員のみが入校できるといったようなものです。
留学する学校や課程教育によって、それぞれ違いがあると思いますが、全国の部隊から募集されたり、職種や特技等から選考され、(希望するか確認があると思いますが)留学生へ指定される等、いくつかのパターンがあると思います。
陸士(兵)は、留学できない等の規則を見たことはありませんが、米国留学で履修する教育はほぼ陸曹以上の入校規定になっていると考えられます。
陸士(兵)は多数が任期制隊員ですし、陸上自衛隊の英語課程には(階級上)履修できないことも、留学できない、または留学させない理由であると思います。
実際のところ、陸士の留学について、自分は見たことも聞いたこともありません。
3.留学するために必要な試験は?(前半)
まず留学する前に、一度日本でEnglish Comprehension Level (ECL) Testという英語のテストを受けて基準の点数を取らなければなりません。
100点満点のテストで、留学する教育課程によって、80点、75点等の基準点が決まっています。時間は1時間程度だったと記憶しています。(間違っていたら、すみません)
方式はマーキングシート方式で、試験官(米国大使館職員)に答え合わせしてもらいます。
ECL Testの細部を知りたい方はは下記のリンクから(サンプル問題もあります)
https://www.dlielc.edu/testing/ecl_test.php#
国内でECLに合格して、やっとアメリカ行きが決まるわけですが、なんとアメリカ到着後、もう一度ECLに合格しなければならないのです。
ですから、日本でギリギリの点数しか取る余裕がない人は、アメリカに行ってから合格できず帰国する可能性もあります。
ちなみにアメリカに入国してから受けるECLは、指定のPC上で行われ、(日本で行う)マークシート方式と違い、回答者が答えた問題の成否によって、次の問題が難しくなったり、簡単になったりします。
つまり、正解していると難しくなり(点数がもらえ)、間違えると簡単な問題になる(点数がもらえない)という仕組みです。やけに簡単に感じるということは、回答を間違えている可能性が高いということです。
早ければ、10分程度で「終わりました」とPCに言われてしまうので、マークシート方式のテスト時間を想定していると、かなり驚きます。
通常は以上の試験(ECL)を受け、合格すれば、留学の目的であった教育課程に参加できると思います。
しかしながら、学校や教育課程によって、さらに試験や資格等が必要となります。
例えば、海外の大学や大学院へ留学した経験がある方はご存じだと思いますが、TOEFLやIELTS等の基準スコアが、自衛官または、防衛省職員の(大学・大学院等)留学にも必要となります。
また、墜落等、生命の危険が伴う教育課程(パイロット等)には、Oral Proficiency Interview (OPI)と呼ばれる、口述(面接)試験があります。
OPIと語学試験終了後の教育課程については、自衛官の留学について(後編)で詳しく書きたいと思います。
ありがとうございました。